【WACK新章】渡辺淳之介が「世界一を目指す新グループ」を始動——BiSH後継は来るのか

アイドル・地下アイドル

BiSHが東京ドームで解散して、3年が経とうとしている。

そのBiSHを生み出した渡辺淳之介が、かつて自ら設立した音楽事務所WACKと共同で、新たなアイドルグループのプロジェクトを始動させた。「目指すは世界一」という言葉を掲げたオーディションは、SNSで静かに、しかし確実に注目を集めている。

「またBiSHみたいなグループが生まれるのか?」という期待の声がある一方、合宿オーディションは合格者ゼロという結末を迎えた。何が起きていて、これからどうなるのか。背景から整理する。


WACKと渡辺淳之介とは何者か

そもそも、WACKがどんな事務所で、渡辺淳之介が何者なのかを知らない方のために簡単に整理しておく。

渡辺淳之介は、2011年に「新生アイドル研究会」ことBiSを立ち上げ、型破りなプロモーションと強烈なパフォーマンスで注目を集めた音楽プロデューサーだ。2014年に株式会社WACKを設立し、その後BiSHをプロデュース。「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトのもと、BiSHはNHK紅白歌合戦への出場や2023年の東京ドーム解散ライブという伝説的な軌跡を残した。

WACKはBiSH以降も、GANG PARADE、ASP、ExWHYZ、KiSS KiSSなど複数のグループを展開。アイドルシーンにおける一大事務所として存在感を持ち続けてきた。


BiS・BiSHとはどんなグループだったのか——WACKの原点

WACKを語る上で外せないのが、BiSとBiSHという2つのグループの存在だ。この2グループがあったからこそ、今回の新プロジェクトへの期待が生まれている。

■ BiS(Brand-new idol Society)

2011年に渡辺が立ち上げた「新生アイドル研究会」ことBiSは、従来のアイドル像を根底から覆すグループだった。全裸に見せかけたジャケット写真、マラソン企画など過激なプロモーションで話題を呼び、「アイドルとは何か」を問い直す存在として熱狂的な支持を集めた。2014年には横浜アリーナでの解散ライブを成功させ、衝撃的な幕切れとともに伝説となった。

■ BiSH(Brand-new idol SHiT)

BiSの後継として2015年に結成されたBiSHは、「楽器を持たないパンクバンド」というコンセプトを掲げ、アイナ・ジ・エンド、チッチ、モモコグミカンパニーらが在籍した6人組だ。代表曲「オーケストラ」「プロミスザスター」はアニメやドラマのタイアップで広く浸透し、2018年にはNHK紅白歌合戦に初出場。2023年6月の東京ドーム解散ライブは完売し、地下アイドルから国民的グループへという前例のない軌跡として語り継がれている。

この2グループが積み上げた歴史と実績こそが、渡辺淳之介への期待の根拠であり、「次のグループ」への注目が高まる理由だ。


なぜ今、「WACK第1章の終焉」なのか

転機は2025年12月だった。渡辺淳之介はXのコラムで「敗北宣言」とも言えるメッセージを発表した。

内容は衝撃的なものだった。豆柴の大群を除くWACK所属グループ——GANG PARADE、KiSS KiSS、ExWHYZ、ASP、BiTE A SHOCKを2026年内に順次解散させるというものだ。渡辺はその理由を率直に語っている。

K-POPが世界基準のスタンダードになり、実力派・技巧派のアイドルが当たり前になった現代において、「WACKのやり方はただの時代遅れだった」と。BiSHの東京ドームという頂点を経験しながら、TikTokやインスタという新しいプラットフォームの波に完全に乗り遅れた。「バイアスのない世界から見たら、ただ下手なだけ」——自分たちの地下アイドルシーンをそう表現したこの言葉は、長年のファンに大きな衝撃を与えた。

「全部僕の戦略負け、僕の怠慢です」——それがWACK第1章を終わらせる理由だった。


「世界一を目指す」新プロジェクトとは

第1章の終焉を宣言する一方で、渡辺はWACKと共同で新たなアイドルグループプロジェクトを始動させると同時に発表した。

現在渡辺はロンドン大学ゴールドスミス・カレッジの大学院に在籍中。その立場から発したメッセージには、BiSやBiSHを手がけた経験を活かしながら、今度は本当の意味での「世界」を目指すという宣言が込められていた。渡辺はこう記している。「目指すは日本一や武道館、東京ドームでのライブ開催などではなく、世界一でございますw 自分でも今のとこ笑っちゃいますがw 信じないと何も始まりません」。

応募資格は12〜25歳の「野望ある方」。国籍・経験不問で、求める条件の筆頭に掲げたのは「海外で活躍したいと思う気持ち」だ。さらに英語の習得も必須とし、育成期間は「少なくとも1年以上、いやもっと?」と長期スパンを想定している。かつての「下手でも個性で突破する」WACKのやり方とは、明らかに異なるアプローチだ。


合宿オーディション2026の全貌——そして合格者ゼロ

2026年3月22日から28日、長崎県壱岐島で「WACK合同オーディション2026」が開催された。ニコニコ生放送での24時間完全生中継という形式も話題を呼んだ。

しかし、合宿は波乱の連続だった。書類審査・2次審査を通過した21名と現役WACKメンバーのナ前ナ以(ASP)が参加したが、合宿3日目にして脱落が相次ぎ候補生が残り1名という事態に。急遽、壱岐島に来られる挑戦者を緊急募集するという前代未聞の展開になった。

渡辺は合宿初日から候補生たちに「ダンスも歌も時間がかかる。毎日欠かさず努力しなきゃいけない」「一夜漬けでやろうとしているなら、今のWACKにはいらない」と厳しい言葉を投げかけた。最終日、残った4人がBiSの「FiNAL DANCE」をパフォーマンスし審査が行われたが、結論は合格者なしだった。

渡辺は最後にこう締めくくった。「僕の第1章WACKの合宿人生はこれにて終了とさせていただきたいと思います」。


現在も続くオーディション——次のステップへ

合宿オーディションの合格者ゼロという結果は、プロジェクト自体の終了を意味しない。WACKの公式サイトでは、現在も「一芸に秀でていること」を応募要件とした新たなメンバー募集が続いている。渡辺の言葉を借りれば、「俺の答えを探して、改めて自分も努力をしていきたい」という段階であり、新グループのデビューに向けた歩みは止まっていない。


考察|「BiSH後継」は来るのか——期待と現実のあいだ

率直に言う。今の段階では、BiSH後継かどうかを判断するのは時期尚早だ。ただ、いくつかの視点から整理すると、輪郭が見えてくる。

■ 渡辺淳之介が「変わった」という事実

かつてのWACKは「下手でも個性と物語で突破する」というスタイルだった。それがBiSHを紅白・東京ドームまで連れて行った。しかし今回の渡辺は、そのやり方を自ら否定している。英語習得・長期育成・高いパフォーマンス水準——これはK-POPの育成モデルに近い発想だ。BiSHを生んだ渡辺淳之介が、BiSHとは全く異なるアプローチで次を作ろうとしている。そこに注目する価値がある。

■ 合格者ゼロが示す「基準の高さ」

合宿で21名以上が集まりながら誰も合格しなかったことを、単純な失敗と見るのは早計だ。渡辺が「世界一」を掲げた以上、かつてのWACKが許容してきた「粗削りだけど面白い」では通用しない基準を設けているということでもある。合格者ゼロは、妥協しないという意志の表れとも読める。

■ BiSHを超えるには、何年かかるか

BiSHはデビューから東京ドームまで約8年かかった。渡辺自身も「何年かかるかわからない」と明言している。今すぐ「BiSH後継」を求めるのは、最初からゴールを間違えているかもしれない。むしろ問うべきは「このプロジェクトが5年後、10年後にどうなっているか」だ。

渡辺淳之介が「世界一」という言葉を笑いながら書いた瞬間から、何かが始まっている。BiSHもBiSも、最初は誰も本気にしなかった。今のWACKのプロジェクトを、もう少し長い目で追い続けてみてほしい。

📝 WACK新グループプロジェクトのオーディション詳細はWACK公式サイト(wack.jp)から確認できる。現在も新メンバーの募集が続いている。

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